2015年に廃業したビジネスの失敗談 3選
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さて、2015年も残すところわずか。そんな中、ブログ記事のタイトルを見て「なんで年末にこんな暗い話題を?」と思っている方もいるでしょう。でも、この3つのビジネスの失敗談を見てみると、1つの大切な共通点が見えてくるのです。皆さんも是非、共通点を考えてみてください。


1.Quirky

Quirky 出典:Business Insider

2009年に設立されたQuirky。一般の人がもつアイデアを、一般の人が力を合わせて磨き上げていく。そして「優秀」と判断されたアイデアをQuirkyが商品化。収益は携わった人で分け合う、という画期的なサービス。

「スピード重視」で質が低下


Quirkyは商品化のプロセスを短くする、ということに重点を置き、「1年間で50の新しい商品を作る」という目標を立てていた。

ある記者はこの目標設定こそがQuirkyの失敗へ繋がったと指摘している。「スタートアップが1年に50もの商品を作るのは、腕に羽をくっつけて飛ぼうとするようなものだ」と書いている。無謀とも言えるスピードで商品開発を進めようとしたために、商品自体の質が落ちてしまったのだ。例えばiPhoneは販売したら顧客からのフィードバックをうけ、既存の製品を改善し、新しいモデルとしてレベルアップした商品を出す。Quirkyはこのような改善をしなかった。その結果、爆発的に売れるようなヒット商品を生み出すことに苦しみ、2015年9月に破綻したのだ。


2.Homejoy

Homejoy 出典:Business Insider

2012年に設立された家事代行のマッチングサービス。顧客と家事をするクリーナーとをつなぐサービスとして注目された。

顧客の維持ができないのに、サービスの大規模拡大


CEOのCheung氏は「クリーナーから4つの訴訟を受け、裁判に巨額の費用がかかってしまうため」と、廃業の理由を説明した。しかし、訴訟が起こる前から収益が追いついていなかったという現実がある。

Homejoyは顧客の維持に苦戦していた、と元従業員はいう。その理由は主に2つ。1つ目は新規顧客の獲得のために、破格の割引価格でサービスを提供していたということ。「割引価格ではサービスを使うけど、定価では使わない」という顧客が殺到してしまったのだ。2つ目は清掃の経験がないクリーナーが多く、サービスの質が悪かったということ。定価を払ってもいい、と考えていた顧客でも継続して依頼をしようとは思わなかったのだ。

しかし一番のミスは事業の拡大を止めなかったことだ。顧客の維持ができない、という問題を抱えつつも、多い時には6ヶ月で海外を含む30の都市へとビジネスを展開した。「いま考えてみると、意味がわからない。この場所でビジネスが上手くいってないのに、どうして新しい場所でサービスを始めたのか。」と元従業員は疑問を抱く。収益が上げられないなか、訴訟を起こされ、結果的に廃業となったのだ。


3.Zirtual

Zirtual 出典:Business Insider

2011年に設立された。忙しいビジネスマンをネットを通してサポートする、バーチャル秘書サービスを提供。

お金がないのに正社員の雇用強化


創立者のDonovan氏は、失敗した理由について、「一言でいうと”burn”」と説明した。”burn”とは、一定の期間内に減っていくお金のこと。つまり「赤字が続き、どんどんお金が減ってしまった」と失敗の理由を明かしたのだ。

もともとZirtualが顧客に紹介していた秘書は独立請負人だった。しかしZirtualはサービス向上のために、秘書を正社員として雇用し直した。正社員には福利厚生などを提供する必要があるため、独立請負人よりもコストが大幅に増えることになったのだ。

それでも「18ヶ月の間に従業員の人数を150から400に増やしていた」と元従業員は語る。さらにZirtualをその後買収した会社のCEOは「需要よりも早いペースで秘書を増やしてしまい、払いきれないコストを生んでしまった。」と分析した。無理のある拡大を試みた結果、Zirtualは2015年8月に突然の廃業を余儀なくされたのだ。


さて、3つのビジネスの失敗談をご紹介しました。これら3社に共通するのは「ビジネスの根本的な部分に問題があるのに、それを修正しないまま、成長を急ぎすぎた」ということではないでしょうか。Quirkyの1年50商品製作、Homejoyの6ヶ月で30都市進出、Zirtualの18ヶ月で従業員約250人増員。自分たちの会社の状態や状況に見合わない大規模な成長を推し進めてしまい、ビジネスに失敗してしまったのです。

「人生は川の中を歩いて渡るようなものだ。大きすぎる一歩を踏み出してしまうと水の流れに足を捉えられ、転んでしまう。大切なのは、小さな一歩を踏み続けること。そうすればいつか渡りきれる。」ある小説で読んだこんな一節が頭をよぎりました。状況を見極めながら、慎重に一歩ずつ進んでいくことを心がけ、来年も目標に向かって頑張っていきましょう。

参考文献

Business Insider: In Memoriam: 7 Once-Hot Startups that Shut Their Doors in 2015
Observer: The Real Reason Quirky Failed
Forbes: What Really Killed Homejoy? It Couldn’t Hold On To Its Customers
Business Insider: On-Demand Cleaning Company Homejoy is Shutting Down as its Tech Team Departs for Google
On-Demand Startup Zirtual Will be Back in Business Thanks to Startup.co
Business Insider: The CEO of the Startup that Dissolved Overnight Explains what Happened: Burn

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