スタートアップを考えている人が、絶対に乗り越えなければいけない大切なプレゼン。それは投資家の前でビジネスアイデアを発表するピッチです。
ただでさえプレゼンをする時は緊張してしまったり、自信が持てなかったりするのに、それが投資家の前だと思うと・・・。
「うわぁー」と思ってしまったあなたに、どんなプレゼンでも成功させる3つの方法をご紹介します。どれも科学的に効果が証明されているので是非試してみてください。
1.「落ち着く」のではなく「楽しみ」にする
出典:Flickr by blinkingidiot
落ち着こうとするとネガティブ思考になり、逆効果?!
緊張しているとき、多くの人は「落ち着こう」とするのではないでしょうか。深呼吸をしたり、リラックスできる音楽を聴いたりしますが、実はこれが逆効果である、という研究がアメリカで発表されました。緊張している人が落ち着こうとすると、逆に起こる可能性のある悪いことばかりを考えてしまう、というのです。
「楽しみにする」とカラオケの点数が大幅アップ
あるカラオケを使った実験では、113人の参加者に有名なロックの歌を歌ってもらったそうです。参加者は歌う前に「緊張しています」「楽しみにしています」「落ち着いています」「怒っています」「悲しんでいます」のいずれかを言うよう、ランダムに指示が出されます。
「緊張しています」と言った参加者の得点は平均で53。「落ち着いています」「怒っています」「悲しんでいます」のいずれかを言った参加者の平均得点は69。そして「楽しみです」と言った参加者の平均はなんと80。ダントツでいい結果が出せた、ということがわかります。
緊張してても「楽しみだ」と声に出して言う
研究者によると、緊張しているときの体の状態は、ワクワクしている時の状態にとてもよく似ている、ということです。そのため、無理に落ち着こうとするのではなく、楽しむ方向に持っていくほうが簡単で、効果があるのです。ここで一番の救いになるのは、実際は緊張でお腹がムカムカしていても「楽しみだ」と声に出して言うだけでいいということです。ピッチの直前にその一言を言っただけで結果が大きく変えられる。とても魅力的ですよね。
2.ルーティンをつくる
出典:Qreators
あの五朗丸も・・・
日本ラグビー五朗丸選手がキックをする前のポーズが注目を集めましたね。あれは多くのスポーツ選手が取り入れているルーティンと呼ばれるものです。五朗丸以外にも、野球のイチローや体操の内村航平など本当に多くのアスリートがルーティンを行っています。
そもそもルーティンって何?
簡単に言ってしまうと、これから行うことに対する準備となる動きです。例えば内村選手は跳馬の前に両手を前に伸ばす仕草をします。これは体の軸を確認している動作だと言われています。ちなみに、「緊張している時は掌に『人』を書いて飲む」といいますが、これは何の準備にもなっていないためただのおまじないになります。ルーティンは必要な準備を徹底的に、効率的に行うための行動なのです。
ルーティンを作る時のポイント
では、プレゼンの前に行うのに適したルーティンを作るにはどうすればいいのでしょうか。まず、プレゼンの前にしなければいけないことのリストを作ります。例えば機械・機材のチェック、体のウォームアップ、精神の状態を整えるなど、直接プレゼンに関わるものがあります。それからプレゼンの前に食べるものやタイミング、トイレに行く、プレゼンに適した服を着る、など自分に関する準備もあります。
そしてそれらを行う順番を決めます。その時に大切なのは「どんな状況の中で行うのか」を同時に考えることです。人は大きく2つのタイプに分けることができます。プレゼンの前はプレゼンにだけ集中したほうがいい人、あまりプレゼンのことを考えずに気を散らしておいたほうがいい人です。自分がどちらのタイプなのかを見極めて、それにあった状況下で準備をすることでよりルーティンの効果が期待できます。例えばプレゼンにだけ集中したほうがいい人は、できるだけ静かなところで準備をしたり、食事をしながらプレゼンの資料を見たりしたほうがいいでしょう。反対に、プレゼンのことを考えすぎないほうがいいタイプであれば、賑やかな場所で時間を過ごしたり、明るい音楽を聴いたりするといいでしょう。
3.体のポーズがあなたを変える
出典:The Seattle Times
強い立場のポーズと弱い立場のポーズ
競争で勝った選手が、顎を少しあげ両手をV字に広げる、そんなガッツポーズをよく目にしますね。驚くことに、生まれながら盲目の人も、勝利したときには同じポーズをとるそうです。「自分は強い立場にある」と思ったとき、人は体を広げ、より多くの空間を占領します。反対に自分が弱い立場にいるときは、腕を組んだり、頭を抱えたり、体を小さくするような姿勢をとります。これは動物界でも見られる現象で、私たちの本能によって生まれる行動なのです。
この写真では上の列が「強い立場のポーズ」、下の列が「弱い立場のポーズ」です。
出典:James Clear
体で脳をコントロール
「楽しくない時に無理矢理口角を上げて笑顔を作ると、楽しい気持ちになる」という研究があります。つまり体が脳をコントロールできる、ということですね。ある社会心理学者はこれと同じ現象が立場を表すポーズでも起こるのか、という疑問を解明すべき、実験をしたのです。
たった2分で体質を変える
実験では参加者の唾液を採取したあと、2分間ランダムに与えたポーズをとってもらいます。参加者にとってもらったポーズは大きく分けて2種類。空間を占領するような「強い立場のポーズ」と体を萎縮するような「弱い立場のポーズ」です。2分後、再び唾液を採取し、ホルモンの変化を調べたのです。すると、強さを感じる「テストステロン」とストレスによって生まれる「コルチゾール」という2つのホルモンに次の様な変化が現れました。
強い立場のポーズをとった人達:テストステロン20%増、コルチゾール25%減
弱い立場のポーズをとった人達:テストステロン10%減、コルチゾール15%増
つまりたった2分「強い立場のポーズ」をとっただけで、強さがみなぎりストレスを感じにくい体になっていったのです。
これは自分より立場が上にある投資家の前でピッチをするときに応用できます。ピッチをする前に、2分間だけ、「強い立場のポーズ」をとればいいのです。たったそれだけで自然と自信が湧いてきて、堂々とした態度でプレゼンをすることができます。ただし、投資家に「強い立場のポーズ」をとっているところを見られてしまうとあまりいい印象は持たれないでしょう。トイレなど誰にも見られないところでやるのがよさそうですね。
どれも信じられないくらいシンプルで、すぐにでも取り入れられそうですね。私は最近プレゼンをする機会があまりないのですが、これらの方法を知って早くプレゼンをしたくなってきました。やっぱり科学的な根拠があると効果が期待できますよね。みなさんも是非取り入れて、大切なピッチやプレゼンを成功させましょう!
参考文献
Get Excited: Reappraising Pre-Performance Anxiety as Excitement
Sports: Why the World’s Best Athletes Use Routines
Asagei+: 羽生結弦、五郎丸、イチロー、内村航平…ルーティンワークはアスリートの命
Amy Cuddy: Your Body Language Shapes Who You Are