スタートアップとは?ポール・グレアム氏の「スタートアップ=成長」からみる3つの特性
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「スタートアップって何ですか?」と聞かれたとき、みなさんは答えることができますか?「IT系のオタクが3人くらい集まって、何か新しいものを開発して・・・」とか、イメージは湧いても詳しく説明するのは難しいですよね。

それもそのはず。実はスタートアップという言葉の定義はとても曖昧なんです。スタートアップに関する文献を読んでいくと、本当に色々な定義があり、人によって捉え方は様々です。Y Combinatorの創業者、ポール・グレアム氏は「スタートアップ=成長」というエッセイを書きました。タイトルの通り、彼は「『スタートアップ』に必要不可欠なものは『成長』以外にない。」と語っています。そして特に「素早い成長」が大切だという見解を示しています。今回は、グレアム氏のこのエッセイを元に、スタートアップの3つの特性見ていきましょう。


1.大きな市場を狙って、成長の伸びしろを確保する

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出典:Pixabay

成長をするためには大きな市場が必要だ。大規模な市場を獲得するには以下2つの条件を満たす必要がある。

① 多くの人が欲しがる、あるいは必要としている商品・サービス
② その人達全員にその商品・サービスが提供できる能力

例えば地元で新しくカフェをオープンしたとする。「コーヒーが飲める場所」というのは多くの人が欲しがるものであるため、上記①は満たしている。でも「コーヒーが飲める場所がほしい」と思っている世界中の人全員にそのカフェでサービスが提供できるかといったら、それは不可能だ。カフェに来られる人というのは地理的に限られていて、上記②にはあてはまらない。需要があっても市場が小さく、急速な成長が望めないため、「スタートアップ」とは呼ばれない。

一方、グーグルのサーチエンジンはどうだろうか。これは上記2つの条件を綺麗に満たしている。多くの人が必要としていて、地理的な制限なく、世界中の人にサービスを提供できる。大きな市場があり、大きく急速な成長が狙えるのだ。

2.イノベーションを通して、新しい商品・サービス・価値を創造する

light-bulbs-1125016_1920出典:Pixabay

スタートアップというと「今までにないものを作る」というイメージも強いだろう。グレアム氏もイノベーションはスタートアップの大切な一部だという認識を示している。再び上記①、②の要素を見てみてほしい。両方揃うようなものは、そうめったにあるものではない。あったとしても、それにはすでに多くの企業が着目していて、競争率がものすごく高くなってしまっている。だから新しいものを創造する必要があるのだ。

ただグレアム氏は「スタートアップとは、故意的に他の人が見逃したアイデアを探すわけではない」と説明している。成功しているスタートアップの創設者は、他の人には見えない問題や解決法を見出すことが得意だ。それを追っていくと「今までにない商品・サービス・価値」が自然と生まれていく。そしてそれが「ほとんどの人にとってかかせないもの」として定着し、急激な成長につながる。

アップルの共同創立者、スティーブ・ウォズニアック氏もそうだ。彼は「自分だけのパソコンがほしい」という問題を抱えていた。そして自分の技術を活かし、自らパソコンを作ってこの問題を解決した。当時「自分だけのパソコンが欲しい」と考えている人はほとんどいなかったが、技術の進歩によって欲しがる人は急激に増えていくことになる。ウォズニアック氏はそのニーズが一般的になる前に、解決策を見つけ出していたのだ。そして結果的に、アップルという会社を通して、世界中の人に「自分だけのパソコン」という価値を与えていくこととなった。

3.スタートアップのすべての行動の裏には「成長」という狙いがある

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出典:Pixabay

スタートアップというと、「IT系」とか「投資家から多額な出資金を募る」などといったイメージが湧くだろう。あるいは「食事や睡眠を犠牲にしてまで働き続ける」といったイメージを持つ人もいるだろう。これらのイメージの元になっているのも「成長」を目指しているということにある、とグレアム氏は書いている。
この場合、「成長」とは会社がどれだけ大きくなったか、ということ。新規顧客数や収益など、様々な方法で測ることができる。そしてグレアム氏はエッセイの中で次のように語っている。

「創業者が常に知っておかないといけないのは『成長率』です。『月100人くらいの新規顧客を獲得しています。』と言う創業者がよくいますが、これは成長率ではありません。新規顧客の絶対数ではなく、既存の顧客と新規顧客の割合、それが大切なんです。毎月同じ人数の新規顧客を獲得しているだけでは(それが100人だろうが1000人だろうが)成長率は低下しているわけですから、どこかに問題があるということになります。」スタートアップは常に前よりも大きな成長をしなければならない、ということだ。

そして成功するスタートアップは「成長」のためだけに動いている、とグレアム氏は語る。例えばITに力を入れているスタートアップが多い理由。常により大きな成長をし続けようとすると、どうしてもインターネットというところにつながる。必ずしも「スタートアップ=IT系」というわけではないが、スタートアップに必要不可欠な「成長」を可能にするには、テクノロジに頼るのが一番現実的。だから今存在する多くのスタートアップはIT系が多い、ということになる。


スタートアップというと、とても難しいことのように感じますが、「スタートアップ=成長」と考えると意外とシンプルにまとまりますよね。もちろんスタートアップには他にも様々な定義があるので、グレアム氏だけが正解というわけではありません。でも成長するのが大切だ、ということを頭にいれておけば、起業をしてからも大きなヒントになりそうですね。

参考文献

Paul Graham: Startup = Growth

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